〜VRゴーグルでも注目される2つのレンズ技術を解説〜
VRやARなどの光学機器において、「フレネルレンズ」や「パンケーキレンズ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。どちらも映像をユーザーの目に最適に届けるための重要なレンズですが、仕組みも特徴もまったく異なります。
この記事では、この2つのレンズの違いについて、構造や原理、用途、そして実際にどんな体験の差があるのかを解説します。
なお動画は、VRゴーグル用ではなく、フレネルレンズとパンケーキレンズの違いがわかるようにしています。
フレネルレンズとは?
フレネルレンズ(Fresnel lens)は、通常のレンズを薄く・軽量化するために開発された光学技術です。名前は、フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルに由来します。
特徴:
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レンズの表面に同心円状の段差がある(これにより厚みを削減)
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軽くてコストが安い
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VRゴーグル(特にMeta Quest 2など)にも採用されている
メリット:
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薄型・軽量化が可能
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比較的安価に製造できる
デメリット:
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「ゴッドレイ(光のにじみ)」が発生しやすい
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映像に若干の歪みやぼやけが出ることがある
パンケーキレンズとは?
パンケーキレンズ(Pancake lens)は、光を何度も反射・屈折させることでレンズの厚みを抑える特殊な構造を持つレンズ技術です。名前の由来はその平べったい形状から。
特徴:
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偏光板を利用して光を複数回反射(光路を折りたたむ)
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非常にコンパクトな設計が可能
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Meta Quest 3やPICO 4など、最新のVR機器で採用が進んでいる
メリット:
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ゴッドレイが発生しにくく、映像がクリア
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装置全体の薄型化が可能(より「ゴーグル感」が少ない)
デメリット:
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構造が複雑で高コスト
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光の反射による光量ロス(映像が若干暗くなる傾向)
比較表:フレネル vs パンケーキ
| 項目 | フレネルレンズ | パンケーキレンズ |
|---|---|---|
| 厚み・サイズ | 中程度〜やや厚め | 非常に薄い |
| 映像の鮮明さ | ややにじみあり ×:同心円状の段差 |
高精細・くっきり |
| 重量 | 軽量 | さらに軽量化可能 |
| 製造コスト | 低コスト | 高コスト |
| 採用例 | Valve Index、Meta Quest 2,Quest3S, HTC Viveで 旧式になりつつある。直近でもVive製品で 採用されている。 |
Meta Quest 3, PICO 4Ultraで採用 現在のVRChatではこちらが主流 |
| ゴッドレイ発生 | 発生しやすい | 発生しにくい |
どちらが優れているの?
一概に「どちらが優れている」とは言えません。それぞれに明確な強みと弱みがあります。
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安価で広く使われているのがフレネルレンズ
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次世代の映像体験や軽量化を狙った製品ではパンケーキレンズ
といった住み分けが進んでいます。とはいっても、実際問題、パンケーキレンズが多いです。

結論:パンケーキレンズから始めた人がフレネルレンズに移行するのはお勧めしない
もしあなたが「まずは安価にVR体験を始めたい」なら、フレネルレンズ搭載の機器で十分満足できます。
一方で「できるだけ軽くて高画質な体験をしたい」なら、パンケーキレンズ搭載の機器がおすすめです。
今後はパンケーキレンズのさらなる低価格化や高性能化が進み、主流になっています。
パンケーキレンズの人が、フレネルレンズになる際は注意しましょう。
