この記事はユーザー向けに記載したものであり、事業者向けに書いたものではありません。
主に全く知らないユーザーがPSE法の概要を知るために記載しております。
正確な理解については、専門家や国民生活センター等 https://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2019_10.html
をご確認ください
1. はじめに
日本国内で電気製品を販売・使用する際、必ず耳にするのが「PSEマーク」や「PSE法」といった言葉です。
「PSE」とは Product Safety Electrical Appliance & Materials の略で、日本語では「電気用品安全法」に基づく安全規制を示します。法律上の正式名称は「電気用品安全法」ですが、実務的には「PSE法」「PSEマーク」と呼ばれることが多いです。
電気用品安全法は、家庭やオフィスで使う電気製品の事故を未然に防ぐために制定された法律であり、消費者の安全を守る役割を果たしています。例えば、発火事故や感電事故といったリスクは、電気製品において常に潜在しています。そのため、国が一定の技術基準を設け、製品が基準に適合していることを確認する仕組みを整備しているのです。
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2. PSE法の歴史的背景
PSE法の前身は 1962年に制定された「電気用品取締法」 でした。当時は高度経済成長期で、家庭にさまざまな電気製品が普及していった時代です。
しかし、製品の安全基準が十分でなく、発火事故や感電事故が相次ぎました。こうした背景を受けて、国は電気製品を規制するための法律を整えたのです。
その後、2001年に電気用品取締法は大幅に改正され、現在の 「電気用品安全法(PSE法)」 に生まれ変わりました。改正の目的は、規制の合理化と国際的な調和です。国際的な貿易の流れの中で、日本独自の過剰規制を見直しつつ、消費者の安全は守る。このバランスを取るために、現在の仕組みが整えられました。
3. PSEマークとは?
PSE法の最も分かりやすい形が「PSEマーク」です。これは製品が電気用品安全法の基準に適合していることを示す印であり、日本国内で対象となる製品を販売する際には必ず表示が必要です。
PSEマークには大きく分けて 2種類 あります。
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ひし形のPSEマーク(特定電気用品)
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リスクが高いとされる製品(例:電源ケーブル、電気ストーブ、電気ポットなど)が対象。
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登録検査機関による「適合性検査」を受ける必要があります。
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より厳しい安全基準が求められる。
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丸形のPSEマーク(特定以外の電気用品)
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リスクが比較的低いとされる製品(例:家庭用ゲーム機、充電器、照明器具など)。
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事業者自身が「自己確認」して基準に適合させればよい。
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つまり、電気用品はリスクの度合いによって二分され、それぞれに応じた手続きが必要になるのです。
4. PSE法の対象となる製品
PSE法では、規制対象となる電気製品を「電気用品」と総称します。その数はおよそ 457品目(2025年現在) にも及びます。これらは大きく2種類に区分されます。
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特定電気用品(116品目)
例:配線器具、変圧器、電熱器具、電気温水器、電源タップ、家庭用冷蔵庫 など。 -
特定電気用品以外の電気用品(341品目)
例:パソコン、ゲーム機、テレビ、プリンター、LED照明、モバイルバッテリー など。
これらの製品を日本国内で「販売」「輸入」「製造」する場合は、必ずPSE法に従わなければなりません。
5. PSE法における事業者の義務
PSE法では、事業者に次のような義務が課されています。
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事業届出義務
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電気用品を製造・輸入して販売する場合、経済産業省に「事業届」を提出しなければなりません。
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技術基準適合義務
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製品が国の定めた技術基準に適合していることを確認する必要があります。
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特定電気用品は「登録検査機関による検査」が必須。
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表示義務(PSEマーク表示)
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基準に適合した製品には、必ず見やすい場所にPSEマークを表示しなければなりません。
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マークがなければ販売できない。
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書類保存義務
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製品の試験成績書や検査記録を保存する義務があります(3年間以上が一般的)。
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6. 違反した場合の罰則
もしPSE法に違反した場合、以下のような罰則が科される可能性があります。
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表示義務違反 → 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
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技術基準不適合 → 製品回収命令や業務停止命令
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届出義務違反 → 50万円以下の罰金
実際に、PSEマークのない充電器やモバイルバッテリーが摘発された事例もあります。Amazonや楽天などのECサイトでは特に注意が必要です。
7. 輸入業者の注意点
近年は、中国や海外から電気製品を輸入して販売する事業者が増えています。しかし、輸入業者も国内メーカーと同様にPSE法の適用を受けます。
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海外メーカーがPSE対応していない場合、日本の輸入業者が責任を持って検査や表示を行う必要があります。
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「海外では安全基準を満たしているから大丈夫」という考えは通用しません。
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実際にPSE法を知らずに輸入販売を始め、後から摘発されるケースも少なくありません。
輸入ビジネスをする場合は、必ずPSEの仕組みを理解しておくことが求められます。
8. 消費者にとっての意味
では、消費者にとってPSEマークはどのような意味を持つのでしょうか?
それは 「安心して使える電気製品の証」 です。
PSEマークがある製品は、国の技術基準に適合しているため、発火や感電のリスクが低減されています。もちろん絶対に事故が起きないわけではありませんが、基準に適合していない製品に比べれば格段に安心です。
そのため、消費者が電気製品を選ぶ際には、必ずPSEマークが付いているかを確認する習慣を持つことが大切です。
9. 最近のトピックと今後の動向
PSE法は時代の変化に合わせて改正や見直しが行われています。最近では以下のような動きがありました。
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モバイルバッテリーの規制強化(2019年)
→ 発火事故が多発したため、モバイルバッテリーが新たにPSE対象製品に追加。 -
LED照明やリチウムイオン電池の規制
→ 普及が進むにつれて、これらの製品も規制対象となっています。
今後も、新しい電気製品が登場すれば、PSE法の対象や基準が拡大する可能性があります。特にEV関連製品やIoTデバイスなど、新分野への対応が注目されています。
また、火災保険との関係性も重要です。
10. まとめ
PSE法(電気用品安全法)は、日本における電気製品の安全を守る重要な法律です。
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特定電気用品(ひし形マーク) と 特定以外の電気用品(丸形マーク) がある。
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製造・輸入・販売する事業者には「届出・検査・表示・書類保存」の義務がある。
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違反すれば罰則や業務停止のリスクがある。
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消費者は「PSEマークがあるかどうか」を安全確認の目安にできる。
PSE法は 「事業者にとっては守らなければならない法律」 であり、同時に 「消費者にとっては安全のシンボル」 です。
