――フルトラ研究所 ヒロ × VRCユーザー A
■ プロローグ
VRChatは「もう一人の自分」で生きられる空間として、多くのユーザーを魅了している。しかし同時に、現実の延長線上にあるため葛藤も存在する。今回は、実際に活動しているユーザーAさんにインタビューを行い、その本音を語ってもらった。
■ 出会いは“鏡の前”から
A:「友達に誘われて始めたんです。最初は軽い気持ちでしたが、アバター姿で鏡に立った瞬間に衝撃を受けました。“あ、これが自分だ”って。」
――VRChat初体験で誰もが感じる“自己投影の感覚”。Aさんもそこから抜け出せなくなった一人だ。
■ フルトラ導入で変わった世界
A:「フルボディトラッキングを入れてからは別次元でした。歩き方や癖までアバターに出る。それを見ているだけで嬉しくて、鏡の前から離れられなかったです(笑)。」
――アバターが「動く人形」から「自分そのもの」に変わる瞬間。そこに没入することこそが、Aさんの原動力だ。
■ 仮想空間に現実は持ち込まないでほしい
A:「“仕事何してるの?”とか“将来は?”って聞かれるのが本当に苦手です。ここはキャリア相談会じゃない。肩書きを脱ぎ捨てて自由でいたいんです。」
――VRCを「逃げ場」と考える人にとって、現実の職業やキャリア話題は一気に空気を冷やす要素になる。
■ 会いたくない人の存在
A:「現実で医者に嫌な経験があって…だからVRの中で“医者なんだ”って聞くだけで気持ちが沈みます。本人に悪気がなくても、トラウマがよみがえってしまうんです。」
――VRCの自由な空間にも、思わぬ“地雷”は存在する。Aさんは静かに別のワールドに移動することで自分を守っている。
■ 安心できるのは“小さな個人ワールド”
A:「湖とか夜空とか、シンプルな風景だけのワールドが好きです。広告も現実的な会話もなく、ただ座って話せる。そこでやっと息ができるんです。」
――仮想世界に求めるのは、派手な刺激よりも“安心できる居場所”。
■ アバターと一体化したい
A:「アバターが呼吸しているみたいに感じます。“俺がアバターだ”って思える瞬間が至福です。」
――現実の制約から解き放たれ、理想の姿で生きられる。それがAさんにとって最大の魅力だ。
■ 行政のメタバース進出に違和感
A:「市や町が税金を投じてワールドを作るのは、正直違和感です。現実に課題が山ほどあるのに、なぜ仮想空間に?と思ってしまう。」
――行政とユーザーの感覚のずれも、今後の課題といえる。
■ カウンセラーより、まず現実を
A:「VRで“カウンセラー”を名乗る人もいますが、それより現実社会の制度を整えてほしい。根本が変わらなければ、心は救われません。」
――バーチャルの活動は現実を補うものではあっても、現実を置き換えることはできない。
■ これからのVRライフ
A:「もっとアバターと一体化して、自分を表現したいです。ダンスや芝居にも挑戦したい。逃げ場としてだけでなく、新しい自分を育てる場所にしたいですね。」
――AさんにとってVRは「もう一人の人生」そのもの。彼の言葉は、多くのユーザーの共感を呼ぶに違いない。
■ エピローグ
インタビューを終えて感じたのは、VRChatが単なる娯楽ではなく「心の避難所」や「自己表現の舞台」として機能していることだ。現実のしがらみから離れてアバターと一体になる体験は、ユーザーにとって生きる力そのものになっている。
